キオクシアの四日市工場は敷地面積約69万4千㎡、東京ドームが約14個も収まる世界屈指の半導体開発・生産拠点だ。IT推進部門のエンジニアは、この巨大な工場で活動する8,000名超の技術者・スタッフのために先進のシステムとネットワークを構築するべく、いわば「社内SE」に近い立ち位置でITの知見・経験をいかんなく発揮している技術者がいる。実際を、キャリア入社の二人に聞いた。
Profile
IT推進部・製造システム基盤担当 R.S
2018年11月キャリア入社。大学で通信工学を専攻して、前職の通信建設会社に就職。ネットワーク構築工事の施工管理に携わるなかで、より市場価値の高いNWエンジニアを目指そうと期して転職。三重県出身で前職は東京勤務。キオクシアへの転職を機に三重にUターンする形となった。
IT推進部・共通システム開発推進担当 M.A
2020年12月入社。工学部材料工学科で生体材料を研究。材料の分析・解析が専門の財団法人に入り、社内SEとして主に企業内保育園のシステム開発などを担当。コロナ禍において、家族の事情から就業環境の変化が必要となり転職を決めた。
※座談会の内容は取材当時のものです。(2021年11月取材)
NWエンジニアとして・SEとして、キャリアアップの大きな一歩。
- どのような理由から、キオクシアに転職したのですか?
前職では通信工事の現場を安全に管理する仕事がメインでした。業種柄、どうしてもネットワークやITのスキルを伸ばす機会が限られており、将来に漠然とした不安を抱くようになったのが転職活動のきっかけです。当時は2018年ですが、ちょうど当社が東芝メモリとして東芝から独立した年で、システムやネットワークも大きく変わるのではないかと想像し、スキルアップを目指して新しい世界に飛び込むにはいいタイミングではないかと応募を決意しました。
半導体知見はほぼ0に近い状態でしたが、志望のポジションは生産工場のITやNWエンジニア。必要な知識は入社後にしっかり勉強すればいいと考えていたので、特に不安は感じませんでした。
私の場合はちょっと特殊で、最初は勤務地からの選択でした。2018年に結婚したのですが、夫の勤務地が東海で、遠距離婚の形をとっていました。しかし、コロナ禍で県をまたぐ移動が難しくなったため、東海地区で社内SEのスキルを活かせる会社・仕事を探してキオクシアに出会ったのです。前職の財団法人のお客様でもあり、世界の半導体技術の革新に貢献しているグローバルリーダーとして憧れていた存在でしたから、願ってもないチャンスでした。
もともと人と関わる仕事がしたくてSEをしていましたし、四日市工場では8,000名以上の方が活動していると聞き、大勢の皆さんの役に立てるシステムをつくれる、きっと大きく成長できると思ってワクワクしました。
早くからビッグプロジェクトに参加して活躍できる。
- 入社後の仕事について聞かせてください。
入社して半年後の2019年半ばから、従来の東芝のネットワークを自社のネットワークに切り替えるプロジェクトにアサインされました。通信網と通信機器をすべて切り替えるため、工場全体に影響が出ます。同時に、レガシーになっていた機器を新しくリプレースしたので、とても貴重な経験でした。私たちIT推進部のエンジニアが主体になり、運用部門やSIerのメンバーとチームを編成。24時間ノンストップの生産活動に影響を及ぼすことのないよう、事前検証を行ったうえで、製造部門のシステム担当とも連携しながら、切り替えを進めていきました。作業にともなって通信がどれくらい途切れるかは、ネットワーク構成から判断できましたが、それがユーザー先の各部門にどう影響するのか、ネットワークの挙動まで考える必要がある等、何十年に一度あるかないかの大規模案件だけに、いろいろ知見を吸収できて、スキルアップにつながりました。
私は入社後、最初の半年はOJTを兼ねて、総務関連の紙書類のペーパーレス化を進めました。そして2021年の夏、四日市工場のシステムやIT化の概要が見えてきた段階で、四日市工場のブランディングプロジェクトに参画。様々な理由で四日市工場に興味をお持ちいただいた方に、社外HPが(対外的な)「工場の顔・玄関口」として有益かつ魅力的な情報を発信できるようにプロジェクトが進んでいました。
直近ではその延長として、従業員の工場に対するブランド意識向上を目指して、社内ポータルサイトのリニューアルプロジェクトも始動。 私がプロジェクトに入り最初に取り組んだのは四日市工場の社内HPリニューアルでした。新しく生まれ変わったキオクシアブランドにふさわしい従業員サイトのイメージは? といった要件のすり合わせから、誰もが利用しやすいUI画面は? スムーズな運用のあり方は? など、2022年4月のリリースを目指して、メンバーと力を合わせながら進めているところです。
8,000名ものユーザーと共に歩んでいる実感が嬉しい。
- どんな時・どんな場面に、やりがいを感じていますか?
私は今、ITインフラの管理業務のひとつ、ネットワーク/セキュリティをメインで担当しています。また、四日市では新棟(第7棟)が建設中なので、ネットワークの工事仕様の策定、工事会社への指示といった業務も手がけています。 ビッグスケールの工場ですから、半導体製造装置もネットワーク機器もサーバやPCも、何千・何万という台数が動いています。全体を見渡しつつ安全第一が求められるインフラをマネジメントできるわけで、あまり他では得られない魅力だと思います。
また、ネットワークを使っているユーザーとの距離が近く、常に生の声が伝わってくるのもいいですね。障害が起こると直ちに解決が必要な点は苦労と言えば苦労ですが、反面、解決して感謝されて、自分が貢献できているとリアルに感じとれます。イノベーションへの挑戦に積極的な会社だけに、ビッグデータやIoTなど新しい取り組みに対してネットワークはどうあるべきかなど、問い合わせを受けることも多く、スペシャリストとして認められていると、嬉しく思っています。
従業員サイトの構築では、自分なりに素案を練り上司の確認を得たうえでメンバー内に発信して実行に移すのが一連の流れです。例えば、従業員に現行のサイトへの意見や問題点をアンケート調査。回答を集計・整理して、どのような画面にすればいいか、仕様を決めてコーディングを発注といったフローで、上流工程を中心に担当しています。
リリース後は工場で働く従業員全員が閲覧します。影響力の大きいメディアの発信に関わっているので、他部門の方が『楽しみにしているよ』と声をかけてくださったり、『こうなるといい』『ここが使いづらい』といった意見をダイレクトに伺えたりします。工場のみんなの役に立っていると肌で感じられるのが、私には何よりの働きがいですね。
スキルや志向に応じて、十人十色のキャリアを開ける。
- 製造業の現場でITエンジニアとして働いて感じたことは?
私の場合、コロナ禍で事前に工場を見学できなかったせいもあって、想像していたよりはるかに規模が大きく、たくさんの人が活動しているのに驚きました。社内SEという職種は前職と変わりませんが、それだけ多くの人たちとつながりを持ちながら、ITで工場を進化させる力になれるのですから、恵まれた環境だと喜んでいます。
実際、従業員向けWebサイトの次は、総務・人事・勤労系の13のシステムを担当することが決まっています。マイカー通勤の駐車場システム、物品搬出システムなど、私が一次窓口になって社内の各部門からの相談に対応しつつ、より使いやすいようバージョンアップしていくのです。このように、自社の工場の多数の従業員の業務や生活に深く関わるシステムの開発や運用を担えるうえ、利用されて役立っているのを間近で見られるのが、キオクシアの社内SEの魅力だと思います。
インフラ担当の視点から話すと、世の中のデータ量の加速的な増大とともに、フラッシュメモリの技術や市場は伸び続けます。自ずと、データを通す道になるネットワークも限りなく太く、厚くしていく必要があります。IoTに接続される機器も増えるばかりだし、セキュリティの確保もますます重要になります。私はこうした枠組みのなかに身を置いて、四日市工場、さらに製造業のネットワーク周りについて何でも答えます!と自負できるレベルのエキスパートを目指しています。
M.Aさんは社内システムのゼネラリスト、私はネットワークインフラのスペシャリスト、他の人もAI・クラウド…などスキル、経験、志向によって十人十色のキャリアを描けるのが、製造業の当社のITエンジニアのメリットなんですよ。
仕事や自身の状況に応じてフレキシブルに働ける。
- 工場でのITエンジニアのワークスタイルは?
工場は24時間稼働ですが、私たちはフレックスタイム制の昼間勤務です。私はコロナ禍のさなかに入社したので、在宅が6~7割・出社が3~4割くらい。1日の配分は、部内や部門間の調整の会議が5割、そのための資料作成が5割といったところです。世の中的にもリモートワークが定着してきましたが、一般的にITエンジニアは場所を問わず働きやすい職種だと思います。フレックスタイムの活用も盛んですし、仕事と家庭を両立しやすい体制が整っています。IT推進部にも子育てをしながら主担当として活躍している先輩社員もいます。
もうひとつ、「キャリアリターン制度」といって、家族の介護や転勤などで一旦離職しても、復帰できる仕組み(※)が用意されているのもいいですね。 ※適用条件は社内規定あり
私も調整業務が多く、8割が会議で残りを企画や資料の検討・準備に充てています。ほとんどオンラインで進められるため、在宅勤務が中心で、出社は月2日程度。仕事や家庭の状況に応じてフレキシブルに動くことができます。プライベートでは今年子どもが生まれたので、このような柔軟な働き方ができることは大変嬉しいです。コロナ禍が収束した後も可能であれば今のスタイルを継続したいし、会社全体がその方向に進むだろうと期待しています。
岩手県の北上工場や首都圏の本社と技術部門、海外拠点とも連携しています。グローバルネットワークをいかにセキュアに運用するかなど、自社のさまざまな部門の人とやりとりしながら進めるケースもあるので、世界的なメーカーの一翼を担っている実感も確かです。
- 最後に、転職を考えているITエンジニアへメッセージをお願いします。
異業種の製造業の工場、かつ前職が社内SEという顧客対峙の業務ではないこともあり、最初は不安でした。しかし、入社後は上司・先輩の方々がOJTで親身に教えてくださって、スムーズなスタートを切れました。キャリア入社向けの受入れ研修も充実していますし、自分が学びたいスキル・挑戦したい分野を話せば、耳を傾けて支援してもらえます。まずは気軽に面談にいらしてください。
四日市工場のIT部門には幅広い業務があり、幅広い分野のエンジニアを求めています。受け口が広いわけで、サーバ、ネットワーク、業務システム、プログラミングなどなど、何かひとつの知識・経験があれば大丈夫。配属希望のヒアリングも毎年あるので、自分に最も合った分野でキャリアを伸ばせますよ。